■日常的に自転車の安全点検を行って下さい
自転車のご乗車前には必ず各部の点検を行ってください。またフレームに傷や亀裂などの破損がないかを確認し、安全性を確認してから乗車して下さい。 製品の一部あるいはすべてが破損した場合、また異常感じた場合にはただちに製品の使用を中止して下さい。
自転車が関連する事故が増加傾向にあることが報道されていますが、下記に引用するとおり自転車単独事故も多く発生しており、ボルトが緩んだ結果事故に至るケースや転倒による破損・折損が原因となったケースがあります。
NITE製品安全センターに通知された製品事故情報のうち、平成19年度から23年度までの5年間に、自転車による事故が609件発生しています。 自転車による事故609件の被害状況は、死亡2件、重傷188件、軽傷257件、拡大被害2件、製品破損等160件です。 事故の発生状況を現象別に分析すると、自転車の種類によらず、次のような事故が多く発生しています。
① 自転車の部位(ハンドル、サドル等)の固定ボルトが緩んだために、脱落や折損したり、操作不能になった。
② 転倒等の衝撃や過大な荷重によって自転車の部位(サドル、前車輪等)が破損・折損した。
③ 坂や曲がり道等でバランスを崩して転倒した。
④ 車輪に泥よけや傘や買い物袋等の異物を巻き込んだ。
引用:独立行政法人製品評価技術基盤機構 自転車による製品事故の防止について
日常的な乗車前点検のほかに、自転車整備有資格者のいる店舗にて定期点検をうけるなどし、より長く安全に製品を利用できるように適正な取り扱いが求められます。
点検整備が不十分な自転車は、自転車利用者にとって危険であるばかりでなく、 歩行者等の周りの人にも危険を及ぼすおそれがあります。このため、自転車利用者は、自転車が自動車等と同じ「車両」の一つであり、 その点検整備は自転車利用者の責任であることを自覚した上で、この指針を踏ま えてしっかりと点検整備を行い、自転車の安全性を確保することが必要です。
引用:東京都自転車点検整備指針 平成25年6月
■自転車製品の耐用年数について
自転車の耐用年数については、自転車のメインフレームに使用されている素材自体の耐久性に対して、実際の使用期間や距離、使用者の体重や走行スピードなどにより大きく変化します。 通商産業省産業政策局消費経済課「製造物責任法の解説」(1994年)によると、業界にヒアリングした結果、企業が考えている自転車の耐用年数は5年、消費者の実際の使用期間も5年との集計結果が公表されています。 一般的に自転車の耐用年数については、製品を引き渡した時からおよそ5年を一定の目安とし、使用環境(使用頻度・走行距離・乗員体重・走行環境・保管状況・整備状況)によっては、 この目安を下回るものと捉えることができます。衝突や転倒など外的要因によるストレスを受けたことがある場合はこの期間を大きく狭める可能性があり、製品の破損や事故につながる可能性が高まります。 フレーム以外の消耗部品に関しては、適宜交換して使用すればその性能を維持して使用することができます。
■自転車のフレーム素材について
自転車のメインフレームには、構造的単純性と耐久性を兼ね備え、生産性が高いダイヤモンド(型)フレームと呼称される形状を採用することが一般的です。 フレームの素材には、スチール(鋼)・アルミ(合金)・炭素繊維強化プラスチック(カーボン)・チタンなどが用いられ、それぞれに長所と短所があり、目的に応じて選択されます。
自転車の利用目的を競技(スピード走行)に絞った場合には軽さが重要であると考える一方で、軽量性と耐久性は往々にして相反する要素と捉えることになります。 ロードレースの世界ではスチール・アルミ・カーボンとフレームの素材が変遷し、現在はカーボンが主流となっています。 カーボンつまり炭素繊維強化プラスチックとは、その名前のとおり炭素繊維で強化しているプラスチックであり、経年の耐久性よりも軽さを重視する場合に選択する最も有力な素材です。
■アルミニウム合金の特性について
比較的軽量で安価であり、錆びにくい特性から広く一般的に用いられている素材にアルミ(合金)があります。 スチールに比べると柔らかく密度が軽いため、フレームを構成するパイプ径を太くすることで剛性をあげており、 この端的な副次的要因としてフレームの表面積が増えることによる大型のグラフィックが採用できる点、フレーム形状の自由度の高さがあります。
アルミやスチールなどの素材に関わらず、その素材がもつ引っ張り強さ以上の応力を加えると破壊は免れません。 また小さい応力を繰り返し与えることによる疲労(金属疲労)によっても破壊することがありますが、 疲労限度を持つスチールに対し、疲労限度を持たないアルミはその特性上、小さい繰り返し応力によってもいつかは破壊に至ることになります。 ひとまとめにアルミ製といっても、レース用機材としてより一層肉厚を薄くするなどしてより一層の軽量化を図っている場合は、一般論として耐久性を疎かにしているといえます。 一方でスチール製の自転車はアルミと比べて耐食性(サビなど)に劣ります。サビが発生した場合にスチールがもつ本来の強度と耐久性を損ねる可能性があります。
一般的なシティサイクルは、高速走行よりも耐久性を重視し、スチールを用いた上でより強固な作りとなっていますが、 高速走行によって軽量性を追求するということは強度を犠牲にしているとも言えます。 競技用として自転車を捉える場合だけでなく、普段の移動手段として自転車を用いる場合においても素材の特性を把握し、使用方法や乗車前点検、定期点検、買い替え(製品寿命)を考える必要があります。
■自転車の分類と諸元について
日本工業規格[JIS]では、一般道路において日常的に使用される自転車を一般用自転車として定義し、 車種の定義や想定する常用速度、設計上の乗員体重を下記のように定義しています。
<<一般用自転車>> 一般道路において,日常の交通手段,スポーツ,レジャーなどの用に供される一人乗りの用の自転車で,表3の諸元に適合するものをいう。 なお,車体部が折り畳み又は分割できる構造であることを問わない。 車種の定義は,次による。
1)スポーティ車 各種サイクルスポーツ用,ツーリング用及びレジャー用として長距離旅行,快速走行など,それぞれの使用目的に適するよう意図して設計された自転車で,チェンジギヤ装置を備えたものの総称。 また,専ら一般道路での乗用を意図した自転車で,マウンテンバイク及びBMX 車に外観の似たマウンテンバイク類型車(ルック車),BMX 類型車及びクロスバイクを含める。 なお,ジュニアスポーティ車は,スポーティ車又は子供車に含める。
2)シティ車 主に日常の交通手段及びレジャーに用いる短中距離,低中速走行用自転車。
3)小径車 室内での保管,自動車トランクへの収納又は公共交通への持ち込みを意図し、呼び(径)20 以下の車輪及び軽量なフレームによって,軽量化及びコンパクト化を図った自転車。 車体部が折り畳み又は分割できる構造であることが多い。
4)実用車 日常業務における交通手段及び運搬手段に用いる短中距離,低速走行用自転車。
5)子供車 主に学齢前の幼児一人が日常の遊戯用として用いる二輪の自転車で,表3 の諸元に適合するもの。
引用:JIS D 9111 自転車-分類及び諸元
4 諸元
一般用自転車,幼児用自転車,(中略)の諸元は,表3 による。ただし,車重及び使用条件は,参考値とする。
なお,特殊自転車については,特定の目的,限定された用途,又は特別仕様に基づく自転車のため諸元として定義していない。
引用:JIS D 9111 自転車-分類及び諸元表3 – 諸元
■スポーティ車について
スポーツ用自転車(スポーティ車)は、舗装路を走行することを想定して軽量化が図られています。
ロードバイクとは、一般的に舗装路を高速走行することを前提としフレームや構成部品が選択された自転車のことを指します。 その仕様は概ねロードレース用自転車(自転車競技)に準じますが、競技に使用しない場合には道路交通法に準じていれば特定の仕様に限定されることのない概念的定義と言えます。 尚、日本工業規格[JIS]において、自転車競技として特定の用途に限定して用いる自転車を「ロードレーサ」と定義・区別して、下記のように分類しています。
特殊自転車 特定の目的,限定された用途,又は特別の仕様に基づく自転車。車種の定義は,次による。(中略)
1011)レーシングバイク
高速走行用で,フリーホイール及び制動装置を備え,競技条件に合わせて設計された専用自転車。 注記 ロードレーサともいう。一般にディレーラ,足固定装置付きペダル及びクイックレリーズハブを装備し,タイヤ幅が28 mm以下で,どろよけ,キャリヤ及びスタンドは装備しない。トライアスロンに使用することを目的に製作されたトライアスロン車もある。 引用:JIS D 9111 自転車-分類及び諸元
スポーツ用自転車として一般に販売されているロードバイクやクロスバイクは、主にスチールが素材として使用されるシティサイクルと比較して軽量化や乗車姿勢を前傾にすることによって舗装路での高速走行を可能としています。 日本の道路交通法上、自転車は軽車両であり車道を走行することになり、条件によっては歩道を走行可能な状況ですが、シティサイクルを利用している多くの消費者が常時歩道を走行しているのが現状です。 例えばこのような歩道走行の際に注意が必要なのが歩道と車道の段差であり、このような段差への進入はスポーツ用自転車においては想定しておらず、パンクやスポーク折れなどのトラブルの原因になります。 また、走行中の振動や車両の転倒は自転車にとってダメージであり、疲労が蓄積されたり、傷が入ることによりフレームの破損につながる可能性があります。
■自転車の安全基準について
自転車の安全基準について、日本では日本工業規格[JIS]が定める「JIS D 9301」が一般的です。 フレームの強度に対する試験項目についても複数あり、自転車の分類及び用途により試験条件が異なります。
フレームの耐振性試験は、路面の突き上げなど細かな振動を想定したものと言え、金属疲労の蓄積によって破断することを前提としつつ規定回数内で破断することがないかを確認するものと言えます。 ダイヤモンド形の自転車に対して、非ダイヤモンド形の自転車は比較的強度が低いため、おもりが軽く設定され、振動回数も70%に留まります。折りたたみ自転車などもこちらに含まれます。
どのような素材にも寿命があり、乗員の体重が重い・走行距離が長い・使用頻度が高い・レース走行や登坂など負荷を掛けるなど、想定よりも速く素材の寿命が訪れる可能性が高まります。 また、風雨や太陽光による劣化やサビ、駐輪場や走行中の転倒による傷・凹みも製品のダメージとなり、フレームの破壊につながる可能性があります。
■マウンテンバイク類型車について
マウンテンバイク類型車とは、日本工業規格[JIS]のJIS D 9111 にて一般用自転車のうちスポーティ車に分類される自転車ですが、自転車フレームの耐振性試験・前倒し衝撃試験のいずれにおいても、おもりの重量や加振回数などの試験の条件がより厳しいものが定義されています。 マウンテンバイク類型車(ルック車)について、一般的に消極的な表現が用いられることがありますが、 同じダイヤモンドフレームを採用するロードバイクやクロスバイクよりもフレームの強度に勝る製品分類と言えます。
尚、日本工業規格[JIS]において、自転車競技として特定の用途に限定して用いる「マウンテンバイク」を下記のように定義して分類しています。
特殊自転車 特定の目的,限定された用途,又は特別の仕様に基づく自転車。車種の定義は,次による。
1010)マウンテンバイク ダウンヒル,スラローム,クロスカントリー,フリースタイルなどのマウンテンバイク競技,荒野,山岳地帯,などでの高速走行、急坂登降,段差越えなどを含む 広範囲の乗用に対応して,軽量化,耐衝撃性,走行性能,乗車姿勢の自由度などの向上を図った構造で,サドルの高さの調整幅100mm以上のフレーム,サスペンション機構,フラット形ハンドル,高い性能を持つブレーキ, ワイドレンジチェンジギア及び呼び(幅)1.5以上のブロックパターンタイヤを装備した自転車。
日本工業規格[JIS]における特殊自転車としての狭義のマウンテンバイクは上記のように分類され、強度においてはその用途に耐えうる構造をもったものと概念的な定義付けに留まり、 具体的な数値を伴う強度に関する基準はありません。 尚、マウンテンバイク類型車には、ステッカー表示などで一般道路以外での乗用を禁じる旨を表示しなければならないことになっています。